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ここがすごい!ヤフーの健康経営

2019/01/08

株式会社シーピーユー
健康プラス編集部 健康プラス編集部

巨大IT企業ヤフー。健康経営を何故実施し、何故効果が出ているのか。その実態に迫る!

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何故、ヤフーは健康経営に力を入れているのか

ヤフーの健康経営。
「UPDATEコンディション」と名付けられたこの取り組みには、多数の従業員が関与している。
公開されているWebサイトでもその健康経営に対する投資全貌が見受けられるが、何故ヤフーはそこまで健康経営に力を入れているのか。
今回は、類を見ない取り組み「ここがすごい!ヤフーの健康経営」を題して、その取り組みの一部を公開させていただきたいと思います。


お話を伺ったは、ヤフー グッドコンディション推進室長の市川様と社食責任者担当の沼田様
インタビューを通して、様々な「すごい!」を発見してきましたので、皆さまにお送りさせていただきます。


ヤフーでは『UPDATE コンディション』という考えが健康経営の基本となっています。
これは、働く人の身体の健康(安全)と心の健康(安心)をUPDATEするということなのですが、ただ単純に健康の課題(メタボや風邪など)への対応だけではなく、働く人のコンディションを最高にするためにあらゆる取り組みを行っていくという想いが込められているようです。
当然、多くのユーザーを抱えるヤフーにとっては、ユーザーの方の課題解決をしていくことが事業としての重要なミッション。その課題解決をするため(=パフォーマンスを最大化するため)に一番重要なことは従業員のコンディション作りということです。


【健康プラス編集部】
健康経営をどんな体制でやっていらしゃるのですか?


【市川様】
ヤフーでは、川邊代表取締役がCCO(Chief Condhitioning Officer)を兼務しています。組織としてはグッドコンディション推進室を設置し、安全衛生委員会やヤフーグループの健康保険組合と連動をしながら健康経営を推進しています。
産業医・看護職・ヘルスキーパーと言った専門家のメンバーもいますが、健康経営を経営戦略の一つとして取り組むため、いわゆる医療職以外のメンバーが10名ほどこの部署に携わっています。


【健康プラス編集部】
体制も他社と比べると手厚いですが、いったい何故ヤフーはそこまで健康経営に力を入れているのでしょうか?


【市川様】
ヤフーは、現在の川邊代表取締役で3人目の経営体制なのですが、現体制で事業戦略を推進し、ヤフーユーザーの課題解決をしていくため、我々のような部門の事業上の貢献は「戦力」を整えていくことが重要であると改めて考えをまとめました。
「戦力」はただ単純に従業員数が多いだけでなく、一人一人が自分が持っている能力を最大限発揮することにより上がっていきます。
能力は、もちろんその人が持っているスキルや、今までの経験・知識・人間力によって発揮をするものですが、そもそも土台としてコンディションが整っていないと発揮できないものです。


川邊代表取締役を筆頭とするグッドコンディション推進室は、まさにこの「コンディションを整えること」に力を注いでおり、ヤフーにとって非常に重要な機能の一つだと言えます。



【健康プラス編集部】
確かに、コンディションが整っていないと、せっかくのスキルや経験も活かされないですからね。
実際には、どのような取り組みを意識してやっていらっしゃるのですか?


【市川様】
私たちは、「コンディションマネジメントサイクル」と名付けているのですが、従業員のコンディションを保つために4つのサイクルを意識しています。


1)測定・コンディション把握
:デバイスなどを基に従業員の健康課題やコンディションの測定
2)理解・気付き
:様々な研修を通して、ノウハウや知識を提供しヘルスリテラシー向上をしてもらうことにより、従業員自らが健康への理解と気づきを持ってもらうようにする
3)環境
:コンディションが整うための場所作りをとことんこだわりをみせる。
4)実行
:従業員が一人で出来ないことをサポートし、専門家からのアドバイスや面談を通してコンディションを上げていく


この4つのサイクルが基本となっております。


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独自な文化。社員食堂での健康経営

ヤフーの健康経営。
本当に幅広く様々なな企画を実施されていらっしゃいますが、編集部が見て感動すら覚えた取り組みが「社員食堂」への情熱とこだわりです。
ここまで社員食堂にこだわりをみせる企業は類を見ないと言っても過言ではないです。


【健康プラス編集部】
社員食堂での健康経営は、本当に素晴らしいものでヤフー独自の文化だと思いますが、取り組みをスタートしてからの変遷を教えてください。


【沼田様】
まさに、社員食堂での取り組みも「コンディション」を整えること、という発想から来ています。
従業員は一日の約半分を会社内で過ごしますが、その働くと上でのコンディション作りの上で一番重要なもののひとつが、まさに食事そのものだと考えております。
食事は、別に社員食堂で食べなくてもいいですし、外食をすることは個人の自由です。
ただコンディション作りには、食事が重要ですし、そもそも「自分の健康に関して自律して欲しい」という考えが部署内ではありました。


一体、どうやったら従業員が健康の意識を高め、自発的に栄養バランスを取る食事をするのか。


まず取り組みがスタートしたのは、社内ツールで食べた食事の栄養素を可視化したことです。
これは、2016年から運用され、従業員が自分がどんなものを食べたかの履歴が分かるというものです。
社員食堂で食べた食事は1品1品カロリー表示と共に、自分で見ることが出来ます。



仮に自分で好きなものを好きなタイミングで食べている人がいたとして、自分自身の可視化されたデータを見ることにより
「おっ、自分はこんなにたくさんのカロリーを取っているのか。そりゃ太るはずだ」
とか
「予想外に揚げ物が多いな・・。健康診断で要注意と出たのに、いかんな・・」
などと気付きが生まれると思います。


世の中には、食事の罠がたくさんあると思っております。
だからこそ、食事のデータが可視化して自分の手元で見られることは重要なことだと考えております。



3

ここがすごい!ヤフーの健康経営~バックヤード体制~

従業員のコンディション作りのために重要な栄養バランス。
そしてその社員食堂での取り組み、そこには外部から見た「ここがすごい!」がたくさん詰まっております。
BASE&CAMP企画運営チームが社員食堂やカフェを運営する、バッグヤードになっているのですが、まさにその彼らの活動は驚愕でした。


【健康プラス編集部】
実際に、社員食堂やカフェの運営に対して、バックヤードでは何をやっていらっしゃるのでしょうか?


【沼田様】
美味しい食事の提供に関しては、後でお話をするとして、まず数値管理の目標設定を部署として立てております。
社員食堂のスペースは、会社内のスペースとして一番大きい場所で850席あるのですが、このスペースの有効活用は重要なミッションです。


目標設定として、食事をしている従業員の人数はもちろんのこと、時間別に社員食堂を利用している人数も時間別に細かく追っております。
そもそも、社員食堂を作る際に、コミュニケーションが生まれやすいような環境づくりに配慮しておりますので、せっかく作ったスペースをいかに有効に従業員の方に気持ちよく使っていただき、働きやすい環境作りをすることは私たちの使命だと考えております。


【健康プラス編集部】
コミュニケーションを生む社員食堂スペース・・・。
具体的にはどんなことを視点にその活動を推進していらっしゃるのでしょうか?


【沼田様】
はい、実は『コミュニケーションは設計できる』と考えております、つまりコミュニケーションの量は設備や制度の工夫によって増やせるということです。
設備や制度は、アイディアを常に入れ込んでおります。
具体的には、下記のようなものが挙げられます。



設備面での工夫
・パソコンやホワイトボードを設置する
→これは、社内のどこでもふとアイディアが浮かんだときにその場でミーティングが出来るような工夫です。
部署内でとじ込まっているだけでなく、「ちょっと社食で話してみない?」と声掛けが自然となるように、ミーティングがすぐに出来るような環境整備をしております。


・音楽を流す
→スペースとして、「ここにいると快適」「ここにいると新しいアイディアが生まれる」ということを作るために、集中力をそがない程度の音楽を流しております。
ちなみに、社員食堂の中は天井を抜いて解放感を持たせており、席の中には「ちゃぶ台席」という特殊なスペースもあります。
これこそ、普段と違った環境でのコミュニケーションの設計と言えるでしょう。


・電源が置いてある
→意外と大切なことは、デスクでの電源の設置です。インターネットに関わる仕事として、常にスマートフォンは手を離せませんし、業務効率を上げるためにも社員食堂のデスクにも電源を完備しております。
電源がある外のカフェを目的として行く人がいるように、社員食堂にも電源を設置することは、盲点かもしれませんが非常に重要なことです。


制度面での工夫
・時間に制限なく利用しやすい
・食べたい時間に食べられる
→社員食堂のスペースは、朝昼晩の食事提供時間以外でも、常にオープンにしており、カフェでは焼きたてのパンやドリンクも提供されております。
社員食堂=ランチだけ。ということではなく、いかなる時間も誰でも利用できるようにしております。
「席で仕事をしないといけない」という制限もなく、従業員はオフィス内で自由な環境でパフォーマンスを最大化させております。


4

ここがすごい!ヤフーの健康経営~こだわりレシピ版~

ここまでは、ヤフーが社員食堂のバックヤード体制や取り組みに関してお話を伺ってきましたが、実際の料理へのこだわり、そして肝心の従業員に栄養バランスのとれた食事を提供するためにやっていることは何なのでしょうか?この話を聞くと、よりヤフーが「ここがすごい!」ということがよくお分かりになると思います。


【健康プラス編集部】
社員食堂に対して、環境はもちろんのこと、誰でも活用しやすい制度も整いました。
一番肝心な料理の味と栄養バランスに関しては、どうなのでしょうか?


【沼田様】
一言で言うと、「美味しい」です。
私は、仕事柄色々な企業の社員食堂にもお伺いしておりますが、自社の社員食堂のメニューは、かなり高品質で美味しいと胸を張って言えます。
しかし、美味しいだけでないところがポイントで、いかに栄養バランスのとれた食事を個別に提供するかをデータ分析と共に行っております。
このデータ分析に専任を置くことにより、従業員の食事に対してのデータが蓄積され、より栄養バランスのとれた食事を提供が出来ると考えております。


ちなみに、栄養バランスだけでなく、当然「減塩」などの生活習慣病対策も怠りません。
ドレッシングを、減塩ドレッシングに変更することは当然なのですが、そこで気を付けないといけないことは美味しさの追求です。
いかに、気付かれずに健康的な食事を美味しく食べてもらうかを水面下で、地道な努力を続けております(笑)
来月は、普通の味噌ではなくて、減塩味噌半分に普通の味噌を合わせてみよう。とか・・・。



【健康プラス編集部】
ほんとうに、食事に関してこだわりをもっていらっしゃることが良く分かりました。
ありがとうございます。
従業員の食事に対してのデータ蓄積、、、そしてその活用。
大変興味深い内容ですが、実際にどのようなデータが蓄積されているのでしょうか?


【沼田様】
先程もお伝えしましたが、社員食堂で食べる食事は全て給料天引きで、一人一人が何を食べたかが確認できます。
そこで、実際に社員食堂で提供する食事にいかに、栄養バランスのとれた食事を提供し、食べてもらうかの研究をしております。当然、誰が何を食べたかは個人情報にあたると考えており、分析に使っているデータは、個人が特定できない情報に加工したものを使用しています。


おそらく、ここまで社員食堂で食べられている食事を研究しているのは私ぐらいかもしれませんが・・。
社員食堂は、とにかく「揚げ物」がよく売れるのです。


・から揚げ
・かつ丼
・ユーリンチー
・チキン南蛮
などなど。


皆様も、定食屋に行くと必ず「揚げ物」を目にするはずです。
ただ、健康の担当者からすると、もっと「魚」を食べてもらいたい。
ただ、魚よりどうしても「揚げ物」を選んでしまう従業員が多く、魚は選ばれないのです。


色々と数字分析をしているうちに、調理法と販売量の相関性が見えてきました。
あくまでもヤフーの社員食堂においてですが、魚料理は、生魚→揚げ魚→煮魚→焼き魚の順番でよく出ます


このようなデータを取っていくと分かることは
・〇は単体では売れない
・〇と△の組み合わせは、〇単体より1.3倍売れる


BASE&CAMP企画運営チームには、このような食事メニューと販売数の相関関係データが蓄積されております。


5

ここがすごい!ヤフーの健康経営~未来の姿~

ヤフーが、社員食堂に対して、メニュー開発やデータ解析を積み重ねていること、非常によく分かりましたね。
インターネットの会社として、そしてITの会社として、次なる試みが気になるところ。
最後に、健康経営(特に社員食堂)の未来の姿を伺ってみました。


【健康プラス編集部】
今も、細かなデータ分析と蓄積をしているかと思いますが、将来的にこの社員食堂を活用してやりたいこと、そして現在進んでいることなどありましたら教えてください。


【沼田様】
はい、まずはデータをまだまだ取得していくことです。
集合体としてのデータもそうですが、食事のデータと健康課題の掛け合わせを今後は考えております。


BMI値と食事の相関性はどんなものがあるか?
健康診断で生活習慣病予備軍と言われた人と食事の相関性はどんなものがあるか?


今、従業員個人に対して見える化していることは、日々の食事データだけですが、ゆくゆくはその人の健康課題に合った食事、そしてライフサイクルなどを個別に提案できるようにAIを活用していきたいと考えております。


 



【健康プラス編集部】
そうなれば、本当に御社の従業員のコンディションは抜群になりそうですね。
社員食堂のさらなる進化が今後も楽しみですね。


【沼田様】
はい。
ヤフーでは、大学生の採用活動時や内定者には社員食堂を見てもらっております。
「社食が美味しかったから、ヤフーに入りたいと思いました」
「社食での従業員の笑顔が素敵でした」
「社食を見て、従業員のために会社が考えていることが理解できました」
そんな声が飛び交うように、もっともっとなっていってもらいたいと思います。


私自身は、社員食堂の解析スペシャリストとしてまだまだヤフーに貢献していこうと思っております。


【健康プラス編集部】
長時間ありがとうございました。
本当に、ヤフーの健康経営の実態、よく分かりました


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